日本ローカーボ食研究会

日本ローカーボ食研究会

第5回定期勉強会印象記:岐阜ハートセンター 管理栄養士 大西歩実

印象記 第5回定期勉強会に参加して

岐阜ハートセンター 管理栄養士 大西歩実

 11月30日(土)、名古屋ルーセントタワーにて行われた第5回定期勉強会に参加させていただきました。毎回、新しい情報を知ることができ、本当に勉強になります。医師、薬剤師、管理栄養士がグループとなって行う症例検討会もそれぞれの視点から様々な意見が飛び交い、充実した話し合いとなりました。

 今回の症例は、「患者の性格、家庭環境、体重減少とHbA1cの乖離などで混乱した症例」ということで、2008年頃は1CARDの食事療法とメトフォルミンによる薬物療法とで、HbA1c6.3~6.5%(JDS)とうまくいっていたのですが、2012年11月にはHbA1c7.7%(NGSP)と悪化してきてしまったため、2013年3月からもう一度、栄養指導を毎月行い、4月には7.3%まで下がったものの、5月7.7%、7月7.7%、8月8.2%、9月8.2%とコントロール不良なまま経過したというものでした。しかも、体重が2013年3月には68.5㎏あったのが、9月には66.0㎏と減少していたのです。患者の性格が横柄で夫婦関係にも問題があったようで、食事日記の信憑性にもやや疑問を感じたが、嘘をつくような方ではないということで、1CARDは実践されていました。ただ、糖質ゼロのものではあるが、アルコールの摂取も多い方でした。それらを踏まえ、なぜ体重が減少しているのにも関わらず、HbA1cは上昇し続けているのか、その原因と今後の方針について話し合いました。尿糖や尿中ケトンはどうか、下痢などが原因で体重が減少しているのではないか、アルコールを摂りすぎているのではないか、メトフォルミンの影響は考えられるか、CT画像で膵臓に問題はなかったのかなどなど。私たちのグループの出した方針としては、1.5又は2CARDにする、ランタスなど持続型のインスリンを開始するというものでした。しかし、この患者のCT画像について検証を行ったところ、実は膵臓癌だったということでした。管理栄養士の私としてはCT画像を見る機会はほとんどないので、驚きました。このようなこともあるということを知らないままで、さらに厳しく食事制限をしてもよくならないということを繰り返しているうちに癌が進行してしまう場合もあると思うと、少し怖いなという気もしました。医師、薬剤師、管理栄養士がチームとなって患者をみることの大切さを改めて感じました。

 次に村元先生から、「ADAの最新食事ガイドライン‐その2‐」について説明がありました。「糖尿病を有するすべての患者に適する、理想的な栄養素比率は存在しない」という言葉は確かにと思いました。それぞれの栄養素が人体に及ぼす影響についてはまだまだ曖昧な部分も多く、また、患者それぞれの体質も違うことから、やはり継続的に栄養指導を行い、その患者がどうしたらどうなるかをきちんとみていく必要があると思いました。

 そして、篠壁さんの「脂質、赤肉摂取と総死亡 日本(アジア)の大規模コホート」は大変興味深いものでした。今まで、なんとなく肉は食べれば食べるほど、心疾患などの病気は増えると思っていたのですが、そうではなかったということに本当に驚きました。もともと、アジア人は欧米人に比べ肉の摂取がかなり少なく、特に日本人に関してはアジアの中でも少ないほうで、牛肉・豚肉など赤肉をよく食べている人もそうでない人も心疾患死、総死亡ともに、ほとんど変わらないという結果でした。ローカーボ食では、炭水化物を制限する分、脂質やたんぱく質の摂取が重要になりますが、肉は体に悪いから食べませんという患者さんは今でも栄養指導をしていて見かけます。アジア人の大規模研究ということで、これからは自信を持って「肉も食べていいですよ!」ということができます。
 ひとつの考え方に囚われるのではなく、新しい研究結果にもどんどん目を向け、栄養指導に役立てていけたらと思っています。貴重な情報を本当にありがとうございました。

おすすめコンテンツ

賛助会員

協賛医療機関

医療法人芍薬会灰本クリニック むらもとクリニック