日本ローカーボ食研究会

日本ローカーボ食研究会

第3回定期勉強会印象記:中村 了

降水確率30%という予報だったので、まあ、まず雨は降らないだろう、自転車で名古屋駅ルーセントタワーを目指そう、とタカをくくっていたのだが、なんとまあ、出発時点で雨がシトシト。詳細は省くが、ルーセントタワー到着がギリギリ。何とか間に合いそうだと思いきや、部屋がわからない。案内掲示を見つけるのに苦戦。見つかったものの、“I会議室”とはかかれているが、何階かがよくわからない。エレベータも、うっかり3F止まりのものに乗ってしまって、意味のない往復。結局、16Fということが判明して、エレベータで無事16Fに着いてホッとしたところで、別の研究会の部屋に入りそうになって赤面。やっとの思いで本来の会場に到達した。

本日、症例検討会と文献抄読会と講演会のミックスと聞いていたが、なにせ初体験のため段取りがよくわからない。さあ、どうなるのかと思っていたところで、しずしずと症例検討会が始まった。灰本先生の症例提示につづき、グループに分かれての討論。これまで処方された薬を中止したとはいえ、しっかりと1.5食ローカーボができているのに、なんで糖尿病が悪化しているのか、という64歳男性のお話。癌でも隠れてるんじゃないか?という案を最右翼で臨むつもりだったのに、“CTは異常ありませんでしたから”と灰本先生に一手を封じられてしまって、やれやれ。別のアイデアをひねり出さなければならなくなった。各グループ、さまざまな意見が出たが、結局、メトフォルミンの使用によって改善。糖新生の抑制、インスリン抵抗性の改善を視野に入れた治療が奏功した、という結末だった。ただし討論の中で、そのほかにも、夜間の糖新生をインスリンで抑える方法、3食ローカーボの短期使用、可能であれば運動療法、などの別の方策も示され、行き詰まったときの次の一手について、有意義な意見交換ができたのではないかと思う。

その次が抄読会であった。題材は、Diabetes Careに掲載された糖尿病に関する栄養のあり方をレヴューした文献。一人ずつあてられてまとめるのか?と思ってドキドキしていたが、そんな心配は無用で、すべて村元先生が訳されて資料にまとめていただいていた。その労力に頭が下がるとともに、たいへん感謝なことでした。さて、文献の中では、ローカーボに関して有利な論文、不利な論文、さまざまなものがレヴューされていた。しかし、基本路線は、ローカーボも非ローカーボも、同じ土俵の上で議論していきましょう、という姿勢。これまで、非ローカーボの論文が優位にレヴューされてきた印象が強く、ローカーボが糖尿病の栄養療法の一選択肢として、その地位を確立しつつある雰囲気を感じた。今後、ローカーボはますます注目されていくに違いない。

さてその次に、岐阜ハートセンターの管理栄養士でいらっしゃる佐藤先生から、思いもかけず、脂質に関するご講演をいただいた。なにせ、脂質の推奨の方針は、時代とともによくよく変遷するため、私自身、どのように指導したら良いのか、いまだに軸ができていない。時間の関係で短く終わられてしまったが、続編をうかがいたいものだった。(資料も頂きたいくらいです~!)

いよいよメインイベント。東京済生会病院内科部長の島田先生のご講演。1型糖尿病がご専門。日本では30~40名ほどしかみえない希少なご専門なのだそうで、たいへん貴重な機会だった。素人の私なぞ、1型糖尿病といえば、インスリンが必須で、抗GAD抗体を測定して診断するんでしょう?という程度の知識しかないのだが、その抗GAD抗体ひとつとっても、力価の程度とともに年齢をからめて、インスリンが必要になるかどうかの予後まで予測できるなど、奥が深いものだと感銘を受けた次第である。そのほか、multiple endocrine diseaseという視点、ΣCPRという考え方、など、1型糖尿病を考える上で必要な発想もお教えいただいた。後半は、インスリンをはじめとする薬剤の使用方法に関するもので、どの薬剤が保護的に、どの薬剤が有害的に作用するのか、自験データやspeculationも交えてお教えいただけたことは、臨床家としてはたいへん有意義なことであった。また、インスリンの使用方法も微に入り細にわたりお教えいただいたのだが、惜しむらくは私の別用の具合で、途中退席せざるを得なかったことである。終了時間を読み違えたのが運のツキだった。

糖尿病は、診断方法さえ教えれば小学生でも診断できる、などと揶揄されることもあるが、その背景に隠れている多彩な病態、様々な生活習慣、そして、受診者それぞれの個別性を考えた時、なんとも奥深いものである。それを、この勉強会のひとつひとつのセッションで多方面から感じることができたのは、何とも味わい深いものではなかっただろうか?

参加者の皆さま、お疲れさまでございました。

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