日本ローカーボ食研究会

日本ローカーボ食研究会

第11回定期勉強会 印象記 平松秀樹

平松クリニック 医師 平松 秀樹

 内科クリニックで診療している手前、最近の糖尿病治療に遅れないようにしたいと考えて、久々にローカーボの勉強会に参加させていただきました。今回も目からウロコが落ちるような知識を収穫することができました。
まずは、治療経過中に急に1.5%HbA1cが下がった症例の検討。原因は膵癌でした。日頃の診療で、患者さん自身が食事療法を緩めたわけではなく、医師側も薬の量を減らしたわけではないのに急にHbA1cが悪化することは時々経験します。原因が分からないことも多いのですが、通常の治療に抵抗する場合には膵癌の合併を考える必要があるとあらためて感じました。この知識は頭の片隅にはあるのですが、不意に遭遇するので注意が必要です。
また、症例のような切除不能の癌に対して、免疫力アップのために体重増加がよいのか、癌細胞の糖消費の側面からの糖質制限がよいのか?癌の進行防止策を食事療法で考えるというこの研究会ならではの考え方を教えていただきました。
 次に中食(コンビニ内での食事など)や外食での糖質制限食を実行するための話。糖質制限のチョコや食品などコンビニによってはそのコーナーがあるとは驚きでした。ローカーボも社会において一般的になったものです。外食=ハイカロリーと考えがちですが、量より(糖)質を考えて食べれば結構利用できること、つい貧乏根性で食べ過ぎになりそうなバイキングも食べ方次第でOKということが楽しく理解できました。
 最後は、糖質制限治療のガイドライン。これを確固とするためには、まだ先になるのではないかという印象を感じています。なぜなら、糖質制限食の治療方針が厳格なものから
“ゆるやかな”方がよいと変わったように、最先端の論文からは糖尿病治療におけるパラドックスが次々と報告されているからです。HbA1c6.5%と7.5%では総死亡率に有意差がないこと、肥満率の差や卵の摂取量の違いでも同様の結果であること、厳しい糖質制限ほど癌死が増えること、脂質摂取の増加により死亡率が低下することなど常識を覆すような事実を知りました。
もしそれが本当であれば、悪い言い方をすれば糖尿病治療に対する“やる気”をなくしそうです。比較的アバウトな治療でも結果オーライとしてよいのではないかと悩みそうです。ただし、成績の悪い患者さんには優しく接することが出来そうでありがたいのですが…。
糖尿病の予後因子はなにが左右するのかまだまだ分からないことが多そうです。
その他、糖質制限食のデータ解析により男性はソフトドリンク、女性は米食の制限が有効であること、低血糖発作の生命予後に与える危険性など、現在の日本の糖尿病治療において、表に出てこない深層の事実を数多く教えて頂きました。
ローカーボ研究会は、ともすると自らの研究の方向性に不利になるような真実を惜しげもなく教えてくれます。直球勝負がこの会の基本精神であると感銘を受け、会場を後にしました。

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