日本ローカーボ食研究会

日本ローカーボ食研究会

第1回定期強会に参加して.4

 第1回定期勉強会に参加して  医師 小早川裕之

 今回は、まず灰本先生が実際に経験された症例を提示されました。必ずしもすんなりといったわけではなく、紆余曲折を経てやっとコントロールできたという経過であり、糖尿病治療にローカーボ食を導入していくうえで示唆に富んだ症例であったと思います。
この症例から学ぶべき最大のポイントは、「GTTでインスリン分泌能が低下しているやせの糖尿病でも、最終的にはローカーボ(1 CARD)+ メトフォルミンの治療が有効であった」ということではないでしょうか。本例では、アマリール1mg/dayを投与された状態でもIRIは遅延かつ低下しており、これ以上インスリン分泌を刺激するような治療法を続けることはあまり意味がないと考えられます。患者さんがアマリールに依存していたために、実際には途中でアマリールが再開されていますが、全経過をみると、やはりローカーボ食+メトフォルミンという、インスリン抵抗性を改善してインスリン分泌刺激を抑える方向の治療が奏功したといえます。やせていてインスリン分泌能が低下しているコントロール不良の糖尿病患者さんを診ると、ついインスリン導入を考えがちですが、患者さんの経済的および心理的負担、さらにはインスリンがガンのプロモーターとなる可能性を考慮すると、こういう患者さんにもまずはローカーボ食をトライしてみるべきではないかと思います。ローカーボ食によって、さらに体重が減ってしまう懸念がありますが、これはタンパク質、脂質の摂取量を増やし、摂取総カロリーを調節することで対処できるのではないでしょうか。また、当初、体重減少が見られたとしても、治療が奏功して糖代謝が安定してくれば体重も回復してくると思われます。

 今回の勉強会は、医師、栄養士、薬剤師、看護師で構成された5~6人の小グループに分かれて、症例に対する治療方針をグループごとにまとめて発表し、最後に症例を提示された灰本先生が実際の経過を解説されるという形式で行われました。糖尿病治療はチーム医療ですから、このように各職種の意見をまとめて治療方針を決定して行くやり方は非常に有意義であったと思います。但し、医師以外の職種の方の発言が少ないのが気になりました。ローカーボ食の成功には適切な栄養指導が不可欠なので、少なくとも栄養士さんにはもっとディスカッションに参加していただく必要があると思います。最初のうちはなかなか発言するきっかけがつかめないということもあるかと思いますので、しばらくの間は、症例提示者が解説をした後で、各グループの医師と栄養士一人ずつが代表で、提示された症例に対する疑問点やコメントを述べることにしたらどうでしょうか。

 後半の英語論文の抄読会も、ふだん読む機会のない方にとっては有益だと思います。私も4年前に開業して以来、日本語の医学書は必要に迫られて読むものの、英文の論文からはすっかり遠ざかってしまっていました。これを機にローカーボ関連の英語論文を読んで情報収集をしてみようという意欲がわいてきました。問題点としては、少し時間がかかりすぎたことでしょうか。バランスとしては症例検討に1時間30分、抄読会に30分程度が適当であると考えます。抄読会の時間を短縮するために、慣れるまでの間、逐語訳はアブストラクトとディスカッション程度にして、それ以外の部分は、ポイントとなるような文書や、糖尿病の文献独特の表現や語彙をピックアップして説明するというようなやり方はどうでしょうか。

 全体で2時間という時間設定は、土曜日の診療終了後ということを考えれば、集中力を維持するのにちょうどよい長さではないかと思います。
今後、参加者が、それぞれの施設で経験した症例を持ち寄って発表するようになれば、この会がより活発な情報交換の場になり、参加者全体のレベルアップにつながると思います。

小早川医院 小早川裕之

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