日本ローカーボ食研究会

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96.性別および年齢で層別化した血清総コレステロール値と心血管疾患との関連性:日本の10のコホート研究からの65594人のプール解析

Relation Between Serum Total Cholesterol Level and Cardiovascular Disease Stratified by Sex and Age Group: A Pooled Analysis of 65 594 Individuals From 10 Cohort Studies in Japan
Sin-ya Nagasawa et al. 
Journal of the American Heart Association.  doi: 10.1161/JAHA.112.001974.

【背景】
 女性および高齢者(特にアジア人)における血清総コレスレロール値と心血管疾患との関連性は不明である。

【方法と結果】
 我々は、日本の一般住民を対象とした最大規模のプール解析であるEPOCH-JAPANにおいて血清総コレステロール値と心血管疾患との関連性を調査した。40-89歳で心血管疾患の既往のない合計65594人を調査した。全脳卒中、脳梗塞、脳出血、冠動脈心疾患による死亡に対するハザード比を概算するためにコックス比例ハザードモデルを用いた。平均追跡期間は10.1年で、死亡数はそれぞれ全脳卒中:875人、脳梗塞:457人、脳出血:212人、冠動脈心疾患:374人であった。参加者は中年者(40-69歳;平均年齢55歳)と高齢者(70-89歳;平均年齢75歳)の2群に分けられた。男性では、最も低い総コレステロール値の区分(4.14 mmol/L[160mg/dl]未満)と比較して、最も高い総コレステロール値の区分(6.21mmol/L[240mg/dl]以上)に対する冠動脈心疾患の多変量調整ハザード比は、中年者で2.52(95%CI:1.15-5.07)、高齢者で2.77(95%CI:1.09-7.03)であった。女性では、最も低い総コレステロール値の区分(4.66 mmol/L[180mg/dl]未満)と比較して、最も高い総コレステロール値の区分(6.72 mmol/L[259mg/dl]以上)に対するハザード比は、中年者で3.20(95%CI:1.44-7.09)、高齢者で1.02(95%CI:0.42-2.49)であった。総コレステロール値は、あらゆる年齢層および男女で脳梗塞との関連性はなく、全脳卒中および脳出血とは逆相関していた。

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【結論】
 高い血清総コレステロール値は、日本人の中年期の男女において冠動脈心疾患と関連性があるが、高齢者でのエビデンスは未だ限られている。

【読後感想】
 日本人の総コレステロール高値は心血管疾患(CVD)死亡リスクに関連するという仮説のもとに,国内の10のコホート研究のメタ解析による検討を行った。その結果,男女とも40~69歳の若・中年者では,総コレステロール値が高いほど冠動脈疾患死亡リスクが高くなる有意な関連がみとめられたが,高齢者では有意な関連はみられなかった。全脳卒中死亡と脳出血死亡については,総コレステロール値が高いほどリスクが低くなる有意な負の関連がみられた。若・中年者は検診などでコレステロールの高値を指摘されたら、心血管疾患死亡のリスク管理のためコレステロールを下げる必要がある。

 最近灰本先生の提案で日本人のデータの論文をよく読んでいるが、海外での1000万人規模のコホートなどには人数や規模で敵わないが、海外で人種が違う人々のデータと比べ同じ日本人でのデータでは論文を読んでいても結果の重みが違う気がする。さらにいろいろな分野からの日本人のデータが出てきたら読んでみたいと思う。

(薬剤師 松岡武徳)

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