日本ローカーボ食研究会

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51.日本人男性における食事中の炭水化物摂取、肥満の存在と2型糖尿病の発症リスク

日本人男性における食事中の炭水化物摂取、肥満の存在と2型糖尿病の発症リスク
Dietary carbohydrate intake, presence of obesity and the incident risk of type 2 diabetes
in Japanese men
Masaru Sakurai et al. J Diabetes Investig Vol. 7 No. 3 May 2016

目的:このコホート研究は日本人男性における2型糖尿病発症に関連したリスクについてエネルギー炭水化物比と肥満を基本として評価した。

参加者と方法:参加者は2006人の工場従事者で、それぞれに患者の主要栄養素は自己申告の食事問診票(FFQ)を用いて計算した。糖尿病の発症は10年間に毎年採血検査を
行うことによって決定した。

結果:研究期間中に232人の糖尿病が発症した。異なる炭水化物比別(<50、50-57.4、57.5-65.0、>60%)の粗発症率は(/1000人・年)、それぞれ16.5、14.4、12.7、17.6であった。全体として炭水化物摂取は糖尿病の発症リスクとは関係がなかった。しかし、糖尿病発症における炭水化物摂取と肥満の程度には有意な相互作用があった。BMIが25以上の参加者においては、より多い炭水化物摂取は糖尿病発症リスクの上昇と関連があった(P=0.034)。肥満の参加者で、65%炭水化物比以上の参加者の多変量調整糖尿病発症リスクは2.01(95%CI: 1.08-3.71)であった。このリスクは炭水化物比50-57.4%の参加者に比べて有意に高かった。

結論:より多い炭水化物摂取は肥満の参加者においては糖尿病発症リスクと関係していたが、非肥満参加者においては関係がなかった。糖尿病の発症を減らすために炭水化物比65%以上の肥満参加者は日本人の摂取基準以内の50-55%へ炭水化物摂取量を減らすべきである。

読後感想:私たちは初診時に糖尿病薬を内服していない糖尿病患者220人の3日間の食事日記の解析によって、HbA1cと炭水化物摂取量(g/日)は正の相関があったが、HbA1cと炭水化物比(%)との関係はなかったことを証明した(投稿中)。男性は女性に比べてその正の関係は強く、明らかに男女差があった。私たちは、糖尿病と食事を研究する場合、エネルギー炭水化物比(%)ではなく、炭水化物摂取の絶対量(g/日)を使うべきであると考えている。炭水化物比を使うと炭水化物摂取量と糖尿病のさまざまな要因との関係について正確な実態は把握できない。しかし、食事日記の解析には膨大な時間を要するので、この研究のように大量の患者を処理する場合には、残念ながら質問紙法由来の炭水化物比をつかわざるを得ないのが現状である。そのような制約のなかで、この研究が肥満者と非肥満者に分けて解析して、おそらくは男性でのみ一定の有意な結果が出せたのは有意義だと思う。(医師 灰本 元)

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