日本ローカーボ食研究会

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48.製薬企業から医師への報酬と処方の関係:横断経済研究

製薬企業から医師への報酬と処方の関係:横断経済研究
Association between payments from manufacturers of pharmaceuticals to physicians and regional prescribing: cross sectional ecological study.
BMJ 2016 Aug 18 Fleischman W

目的:製薬企業から医師への報酬と各病院担当地域における医師による処方の関係を調査する。

デザイン:2013-2014年の報酬開示とメディケアパートD処方データで処方された2種類の薬(経口抗凝固薬と非インスリン糖尿病薬)との関係について全体と医師および報酬のタイプにより層別化した場合の横断研究。

設定:米国の306の各病院担当地域。

参加者:2種類の薬:メディカルパートDでは経口抗凝固薬と非インスリン糖尿病薬は623,886人の医師により患者10,513,173人に対して45,949,454回処方された。

主要評価項目:全ての薬の中で各病院担当地域内の医師により処方された経口抗凝固薬と非インスリン糖尿病薬の比率、又は市場占有率。

結果:306の各病院委託地域の中で、経口抗凝固薬に関連して977,407件で合計$61,026,140の医師への支払いがあり、非インスリン糖尿病薬に関連して1,787,884件で$108,417,616の支払いがあった。各病院担当地域の市場シェアの中央値は経口抗凝固薬で21.6%と非インスリン糖尿病薬で12.6%だった。各病院担当地域の中で医師へ一回の支払いを追加すると(中間価格13ドル:四分位範囲10-18ドル)経口抗凝固薬の処方が94日(95%CI:76-112)の追加処方、非インスリン糖尿病薬では107日(89-125)の追加処方となった(P<0.001)。専門家への報酬は非専門家への報酬より処方日数が多くなる関係にあった(報酬ごとに経口抗凝固薬で212vs100の日数追加、非インスリン糖尿病薬で331vs114の日数追加、P<0.001)。非インスリン糖尿病薬の講演料とコンサルティング料への支払いは飲食代又は教材料への支払いよりも処方日数が多くなる関係にあった(484vs110、P<0.001)。

結論と研究の制限:医師への製薬企業による支払いはメディケアパートD受益者で薬の各処方日数がより多くなることと関係した。専門家への支払い、講演料およびコンサルティング料は非専門家への報酬、飲食代、贈答品、教材料へ支払うより薬剤の処方日数が特に多くなる関係があった。横断的経済研究として、医師への支払いと処方日数の増加の関係について因果関係を証明することはできなかった。さらに、我々の調査結果は各地域レベルでの解釈にとどめるべきである。、われわれの調査は2種類の薬とそれを処方した医師に限定されたものである。

読後感想
現在はたくさんのメーカーが同じような効能の薬を出しているので、各社売り上げを確保するために医師にいろいろな形で支払いしているように見えます。したがって、最終的にはメーカーよりも薬そのものの有効性によって評価されることになります。しかし、効果が同じ薬が2つ残ったとしたらメーカーのサポートがある方を処方することが多いはずです。日本でも一昔前に比べると最近の情報開示の流れによりお金の流れもかなり透明化されてきて、接待などは減ってきてはいると思います。しかし、医師以外の医療分野に比べると(たとえば薬剤師、理学療法士、管理栄養士、臨床心理師など)圧倒的に製薬メーカーとの癒着構造が強いのも事実です。 この論文は途中まで企業の利益供与があるというデータを示しているのですが、結論で因果関係がないなどの書き方には違和感を感じました。 (薬剤師 松岡武徳)

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