日本ローカーボ食研究会

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85.コレステロールの変動性と死亡リスクおよび心筋梗塞、脳卒中の発症リスク:全国の地域住民を対象とした研究

Mee Kyoung Kim et. al European Heart Journal (2017) 38, 3560–3566 doi:10.1093/eurheartj/ehx585

【目的】
 コレステロール値の測定ごとの高い変動性は冠動脈疾患患者において主要心血管イベントの発症を独立して予測する指標であることが示唆されてきた。この見解が一般住民にも当てはまるかどうか認められていないため、この研究は総コレステロール値の変動性と総死亡リスク心筋梗塞、脳卒中の発症リスクとの関連を調査することを目的とした。

【方法・結果】
 心筋梗塞および脳卒中の既往がなく、2002年から2007年の期間に3回以上健康診断を受けたKorean National Health Insurance System cohortにおける3656648人を調査した。総コレステロールの変動性は変動係数(CV)、標準偏差(SD)、平均値とは独立した変動性(VIM)を用いて評価した。追跡期間の中央値である8.3年の間に、84625件の死亡(2.3%)、40991件の心筋梗塞(1.1%)、42861件の脳卒中(1.2%)が確認された。総コレステロールの変動性と評価項目との間には線形の関連があった。 多変量解析では、変動係数(CV)の最高四分位対最低四分位で比較したハザード比と95%信頼区間は、総死亡で1.26(1.24-1.28)、心筋梗塞で1.08(1.05-1.11)、脳卒中で1.11(1.08-1.14)であり、ベースラインにおける総コレステロールの平均値と脂質低下薬の服用とは無関係であった。この結果は標準偏差(SD)および平均値とは独立した変動性(VIM)を用いた解析や様々な感度分析においても一致していた。

【結論】
 コレステロールの大きな変動性は健康に関する有害なアウトカムと関連している。これらの結果はコレステロールの変動性が一般住民において重要なリスク因子であることを示唆している。

【読後感想】
 これまで血圧の変動性と死亡リスクや心血管イベントの発症リスクとの関連を調査した研究は目にしたことはあったが、コレステロールの変動性がそれらの有意な予測因子となるという研究は初めてである。以前に冠動脈疾患患者での研究は行われていたようだが、今回の研究では一般住民を対象としたところに意義がある。つまり、二次予防のみならす一次予防においても変動性という予測因子が重要となるということである。この研究では総コレステロールで見ているが、実際に問題となるのはLDLコレステロールであろう。また、総コレステロールのベースラインでの平均値と脂質低下薬の服用とは無関係という結果であったが、LDLコレステロールで見た場合、スタチンを使った方が変動性も小さくなり平均値もしっかり下げることもできるので死亡リスク、心血管イベント発症リスクを有意に低下させることができるのではないだろうか。

(薬剤師 北澤雄一)

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