日本ローカーボ食研究会

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12.食事中コレステロールが脳心血管障害と関係があるとは言えない

食事中コレステロールは脳心血管疾患に関係なさそう…
食事中のコレステロールと脳心血管障害:システマテックレビューとメタ解析
Dietary cholesterol and cardiovascular disease: a systematic reviewand meta-analysis
Samantha Berger,Gowri Raman,Rohini Vishwanathan,Paul F Jacques, Elizabeth J JohnsonAm J Clin Nutr 2015;102:276?94

背景:食事中のコレステロールが心血管障害リスクを増すことが示唆されており,それがコレステロール摂取を減らせというアメリカの勧告に繋がっている。

目的:著者らは食事中のコレステロールが健康人の脳心血管障害リスクに与える影響について,メタ解析とシステマテックレビューを用いて調査した。

デザイン:MEDLINE, Cochrane Central, Commonwealth Agricultural Bureau Abstracts databasesでの2013年12月まで食事中のコレステロールを定量化した前向き研究が調査された。研究者たちは独立して文献引用,証明されたデータ,参加者の特徴,アウトカム,定量化などについて検索した。少なくとも3つの同じ脳心血管障害のアウトカムの研究が報告された場合は,Random-effect modelsを使ってメタアナリシスを行った。

結果:40研究(361,923人の参加者を含む19観察研究のうち17論文,632人を含む21の介入研究のうち19論文)が1979年から2013年まで論文化され,それらがレビューに適合していた。
食事中のコレステロールはどのような冠動脈疾患(4観察研究,相対危険度を算出できない),脳梗塞(4観察研究,相対危険度1.13,CI:0.99-1.1.28),脳出血(3観察研究,相対危険度1.09,CI:0.79-1.50)などとも統計学的に有意に関係がなかった。
食事中のコレステロールは血清の総コレステロール値(17介入研究,正味の変化11.2mg/dl,95%CI:6.4-15.9 mg/dl)とLDLコレステロール値(14介入研究,正味の変化6,7mg/dl, 95%CI:1.7-11.7 mg/dl)統計学的に有意に上昇させた。LDLコレステロール値は介入研究で1日の摂取総量が900mgを超えたときにはもはや統計学的に有意に上昇しなかった。
食事中のコレステロールは統計学的に有意にHDLコレステロール値を上昇させ(13介入研究,正味の変化3.2mg/dl, 95% CI: 0.9, 9.7 mg/dl),そしてLDLのHDLリポ蛋白に対する比も上昇させた(5介入研究,正味の変化:0.2; 95% CI: 0.0-0.3)
食事中のコレステロールは統計学的に有意に血清中性脂肪値やVLDLリポ蛋白濃度を変化させなかった。

結論:このレビュー研究に使った論文が雑多であり,方法学的な厳密性に欠けているので,食事中のコレステロール値の脳心血管リスクに与える影響についてどのような結論も描くことができなかった。注意深く調整されよく管理された観察研究がこの課題を明らかにするために役立つであろう。

読後感想
食事中のコレステロールは卵黄が中心である。卵はかつて脳心血管障害の敵と考えられていたが,現在では敵ではなく味方ではないかという巻頭言が同じAJCNの号に掲載されており,その基幹となる論文がこの論文である。

今更のように驚くのは「食事中のコレステロール値は脳心血管障害を発症させるか」という重大な問題について本当の結論がまだはっきりしていないことである。私たちは信じていたのはいったいどのような根拠だったのか。たぶん卵はコレステロールが多い,たべると血中の総コレステロールやLDLコレステロールが上がる,だから控えよう,程度の浅薄な根拠だったに違いない。しかし,実際はコレステロールが多い食品を食べてもたとえLDLコレステロールが上がっても,脳心血管障害発症に結びつくとは言えないのであった。特に,本文の図表をみると食事中のコレステロール量と脳心血管障害発症リスクやLDLコレステロール値とには容量依存性がないことは重要である。(医師 灰本 元)

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