日本ローカーボ食研究会

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78.17の高所得,中所得,低所得国からの130000人の死亡および心・血管疾患に対する身体活動の影響:PURE study

The effect of physical activity on mortality and cardiovascular disease in 130000 people from 17 high-income,middle-income, and low-income countries: the PURE study

出典:Lancet 2017; 390: 2643?54 Published Online September 21, 2017 http://dx.doi.org/10.1016/ S0140-6736(17)31634-3

【背景】
身体活動が主にレクリエーションである高所得国では、身体活動が心・血管疾患(CVD)に対して保護効果を有するが、身体活動が主として非レクリエーションである低所得国でも、これが観察されるかどうかは不明である。我々は、異なる経済的レベルの国々で、異なる量と種類の身体活動が、より低い死亡率とCVDと関係するかどうか調査した。

【方法】
この前向きコホート研究では、17カ国(カナダ、スウェーデン、アラブ首長国連邦、アルゼンチン、ブラジル、チリ、ポーランド、トルコ、マレーシア、南アフリカ、中国、コロンビア、イラン、バングラデシュ、インド、パキスタン、ジンバブエ)から参加者を募った。各国の中で、選択された都市・町の市街部と農村部が地理的多様性を反映して判別された。これらのコミュニティの中で、私たちは35歳から70歳までの人を、現在の住所で少なくとも4年間は住もうとしている人々を求めた。身体活動の総量は、国際身体活動質問票(IPQA)を用いて評価した。既往にCVDを有する参加者は分析から除外された。死亡率およびCVDは、平均6.9年のフォローアップの間に記録された。フォローアップ中の主要評価項目は、死亡率と主要な心・血管疾患(CVD死亡率、心筋梗塞の発症、脳卒中、または心不全)とした。死亡率およびCVDに対する身体活動の影響は、家庭、地域社会、および国のクラスタリング(群別)を考慮した社会人口統計的因子および他の危険因子について調整された。

【結果】
2003年1月1日から2010年12月31日まで、168916人の参加者が登録され、そのうち141945人がIPAQを完了した。分析は既存のCVDがない130843人の参加者に限定された。低い身体活動と比較し、中程度(600-3000 MET×分/週または150-750分/週)および高い身体活動(> 3000 MET×分/週または> 750分/週)は、死亡率の段階的減少と関連していた(ハザード比0.80、95%CI 0.74-0.87および0.65、0.60-0.71;傾向はp <0.0001)、主要CVD(0.86、0.78-0.93;傾向はp <0.001)であった。高い身体活動は、高所得、中所得、低所得国でのCVDと死亡のリスクの低下と関連していた。身体活動のガイドライン(WHO)に合致しないために調整された一部の人々は、死亡率が8.0%、主要なCVDについては4.6%であった。そして高い身体活動に合致しない一部の人々では、死亡率が13.0%、主要なCVDは9.5%であった。レクリエーションと非レクリエーションの双方の身体活動は利益と関連していた。
参考:METsは運動強度の単位で、安静時を1とした時と比較して何倍のエネルギーを消費するかで活動の強度を示したもの。600 METs×分/週を達成するには、適度な運動を150分/週、あるいは、激しい運動を75分/週行う。例えば、ウォーキング:3.3 METs、ジョギング:7.0 METs、サイクリング(20km/h):8.0 METs。

【解釈】
レクリエーションと非レクリエーションの身体活動の増加は、高所得、中所得、低所得国の個人の死亡率やCVDのリスクの低下と関連していた。身体活動の増加は、中年における死亡およびCVDを減少させることができる、単純かつ広く適用可能な低コストのグローバル戦略である。

【感想】
身体活動と死亡を含むイベント率との関係を調査した論文で、10万人以上を集めており非常に素晴らしいと思う。イメージとしては運動すれば死亡を含むイベント率は下がる。ただ、運動しすぎれば逆にイベント率は少し上がりそうなものだが、トータルでは綺麗に下降するグラフを呈していた。ただ、レクリエーション(娯楽)での運動では、500-600 MET×分/週が最低のイベント率で、それより運動量が多いとイベント率は若干上昇しているのは興味深い。肉体労働を行わない我々としては、600 MET×分/週前後の運動が適度ということかもしれない。(文責:灰本耕基)

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