日本ローカーボ食研究会

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50.異なる治療介入におけるLDL-C値の低下と心血管リスク減少との関連付け 系統的レビューとメタ分析

異なる治療介入におけるLDL-C値の低下と心血管リスク減少との関連付け
系統的レビューとメタ分析
「Association Between Lowering LDL-C and Cardiovascular Risk Reduction Among Different Therapeutic Interventions A Systematic Review and Meta-analysis」
Michael G. Silverman, MD et.al JAMA. 2016;316(12):1289-1297.

重要性:非スタチン療法による低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)低下の臨床的な有益性はよくわかっていない。

目的:LDL-C低下と相対的心血管リスク減少との関連を、スタチン療法 vs 非スタチン療法で検討する。

データソースと研究の選択: MEDLINEおよびEMBASEデータベースを用い、1966年~2016年7月に発表された異なる9種類のLDL-C降下療法(スタチン療法および非スタチン療法)に関する無作為化臨床試験で、心筋梗塞を含む臨床転帰が報告された試験を検索した。調査期間が6ヵ月未満または臨床的なイベントが50症例未満の研究は除外した。


データ抽出・合成: 2人の著者が独立してデータを抽出・入力し、標準化されたデータシートとデータに対してメタ回帰を用い分析した。

主要評価項目:主要評価項目は、LDL-C値の絶対的減少による主要血管イベント(心血管死、急性心筋梗塞または他の急性冠症候群、冠動脈再建術、脳卒中)の相対リスク、およびLDL-C達成値と主要冠動脈イベント(冠動脈死または心筋梗塞)5年発症率との関連とした。

結果: 計49試験の31万2,175名(平均年齢62歳、女性24%)、主要血管イベント3万9,645名がレビューに組み込まれた。ベースラインの平均LDL-C値は3.16mmol/L(122.3mg/dL)であった。LDL-C値1-mmol/L(38.7mg/dL)低下当たりの主要血管イベント減少の相対リスクは、スタチン療法で0.77(95%信頼区間[CI]:0.71~0.84、p<0.001)、非スタチン療法4種(食事療法、胆汁酸排泄促進剤、空腸バイパス術、エゼチミブ)で0.75(95%CI:0.66~0.86、p=0.002)であった(両群間差p=0.72)。これら5種類の治療を併せると、LDL-C値1-mmol/L低下当たりの主要血管イベント減少の相対リスクは0.77(95%CI:0.75~0.79、p<0.001)であった。他の介入については、臨床試験でのLDL-C値低下の程度を基にした相対リスクの観測値 vs予測値は、ナイアシンでは0.94(95%CI:0.89~0.99)vs 0.91(95%CI:0.90~0.92)で有意差はみられなかった(p=0.24)が、フィブラート系薬では0.88(95%CI:0.83~0.92) vs 0.94(95%CI:0.93~0.94)と予測値より観測値が有意に低かった(p=0.02、すなわちリスク低下が大きかった)。一方、CETP阻害薬(コレステリルエステル転送タンパク質阻害薬)は1.01(95%CI:0.94~1.09)vs 0.90(95%CI:0.89~0.91)で、予測よりもリスク低下が少なかった(p=0.02)。PCSK9阻害薬(プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシンタイプ9阻害薬)は0.49(95%CI:0.34~0.71) vs 0.61(95%CI:0.58~0.65)で有意差は認められなかった(p=0.25)。LDL-C達成値(絶対値)は、主要冠動脈イベント発生率と有意に相関しており、1次予防試験ではLDL-C値1mmol/L低下当たりイベント発生率は1.5%低下(95%CI:0.5~2.6、p=0.008)、2次予防試験では4.6%低下した(95%CI:2.9~6.4、p<0.001)。

結論と関連性: LDL受容体の発現増加を介してLDL-C値を低下させるスタチン療法と非スタチン療法の比較において、LDL-C値低下当たりの主要血管イベントの相対リスクは同等であることが明らかとなった。LDL-C値の低下が、主要冠動脈イベント発生率の低下と関連することも確認された。

 

読後感想
2000年以降、効果的な脂質降下薬であるストロングスタチンの登場で高コレステロール血症はほぼコントロールできるようになった。血圧とLDL―C値が十分に下がった状態では、糖尿病患者が脳心血管障害を発症しても死亡危険度自体は非糖尿病患者と同じレベルになるというメタアナリシスもある。このような視点からLDL―Cを十分に下げることが求められるが、今回のメタアナリシスの結果を受けるとLDL―Cを下げることは重要ではあるが、その方法はスタチン療法でも非スタチン療法でもどちらでも構わず、むしろそれぞれの患者に合った選択肢が広がりアプローチしやすくなると思われる。薬剤的にはアトルバスタチンのように信頼できるジェネリック医薬品も登場しており、それらの恩恵を受ける患者がますます増えると想像に難くない。(薬剤師 加藤 仁)

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