日本ローカーボ食研究会

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ガイドライン 編集の基本方針

ガイドライン発刊にあたり 

編集の基本方針

 私は開業医なのでいろいろな患者を診ている。高血圧は1700人、糖尿病は1000人、毎年の癌の発見数は70人ほどに達する。COPDや肺炎、急性腹症、心身症までを含めると実に多彩な診療をしている。そして、看護師と常に話題になるのは、「ここの患者さんのなかで今年は何人が亡くなっただろうか、死因は何が多かっただろうか?」である。

 2年前に新しい管理栄養士が赴任してきたので、彼女にも問うてみる。「赴任して担当した糖尿病患者さんで亡くなったのは誰?その死因は?」看護師も管理栄養士も答えは同じで、「ほぼ全員が癌です。心筋梗塞や脳梗塞で亡くなった患者は最近ほとんど見たことがない。それから認知症ですね、それが原因で入所した患者や肺炎で亡くなった患者も少なくないです。」これが糖尿病の予後の実態なのである。世界的にも合併する高血圧とコレステロールの管理を徹底した条件下では、つきつめると糖尿病の合併症は癌と認知症となる。それに加えて同じくらい予後を決定するのが、たった一回の低血糖発作である。たった一回でも1.5年以内の総死亡を2倍、心筋梗塞発症リスクを2.5倍、65才以上で高脂血症や高血圧が加わると4.5倍も発症リスクは上昇する。そして低血糖を引き起こすターゲットとなる薬剤はインスリン、SU剤、グリニドの3種類である。

 一方、糖尿病周辺でも最近の大規模観察研究は新しい成果を出し続けている。たとえば、糖尿病のBMIと総死亡の関係をみると、肥満であるほど総死亡が減っている、つまり肥満パラドックスが成立する。栄養学の分野では日本人では脂質摂取をもっと摂取した方が総死亡は減る、とくに飽和脂肪酸の摂取は脳心血管障害を減らす、糖尿病患者から発現する癌のほとんどは腹腔内臓器が原発である、などさまざまな分野で従来の常識を覆してきた。
そのような状況を背景としてガイドラインの基本方針は、

1.糖質(炭水化物)の意義を生命進化、生化学的、人類進化の視点から捕らえる。

2.最近の大規模観察研究の成果を最大限盛り込む。

3.RTCのメタアナリシスを重視する。

4.それらから導き出せる糖尿病患者の生命予後に最も影響する要因をあげて、それに対して現時点での具体的予防策を記載する。
5.低血糖を最小限に留めるためにゆるやかなローカーボを応用する。

6.ゆるやかなローカーボの定義、特徴、具体的な方法と効果を重点的に記載する。

7.ローカーボの特性を明らかにした臨床研究を引用する。

8.DM薬やインスリンとゆるやかなローカーボの組み合わせも具体的に記載する。

9.できるだけ新しい文献を引用する。

10. 診察室や栄養相談室でも使えるようにコンパクトにまとめる(A5版、約60ページ、風媒社、700円)。

 9月下旬から10月初旬にはアマゾンで購入可能となる。コンパクトで安価なので、是非たくさんの医療や栄養関係の方々に読んでいただきたい。


                          2016年 夏

NPO法人日本ローカーボ食研究会代表理事
灰本 元


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